まずは「フォースアウト」から理解しよう

 ひととおり守備の動きがこなせるようになると、守備の連係プレーを学ぶようになります。連係プレーでは、「フォースプレイ」と「タッチプレイ」という言葉が出てきます。

 「フォースプレイ」は、“走者が塁に到着する前に守備者がボールをもって塁に触れてアウトにするプレイ”、「タッチプレイ」は、“塁を離れている走者に触れてアウトにするプレイ”という意味で使われていると思うのですが、実は、「フォースプレイ」も「タッチプレイ」もソフトボールのルールには存在しない言葉なんです。「フォースプレイ」が野球のルールにはあるため、野球から派生した競技であるソフトボールでもこの言葉が使われています。「タッチプレイ」もルールにはありませんが、「タッチ」が普通に“触れる”という意味で使われています。

※「フォースプレイ」・「タッチプレイ」は、『ソフトボール 競技者必携』(公益財団法人 日本ソフトボール協会)の中で「塁審の動きと判定位置」として触れられていますが、これは審判員の動きを解説するもので、ルールではありません。

走者をアウトにする方法

 走者をアウトにする方法は、下記の通り走者の身体に触れる方法塁に触れる方法との二つがありまる(これは打者走者に対する規定です)。

【オフィシャルソフトボールルール】
8-2項 打者走者がアウトになる場合
2.フェアボールを打ったのち、打者走者が一塁に触れる前に身体または一塁に触球されたとき。

 試合の中には、どちらでもよい場合もありますが、走者の身体に触れる方法でなければならない場合もあり、状況に応じて使い分けなければなりません。しかし、まず最初に理解すべきは「フォースアウト」だと思います。

「フォースアウト FORCE OUT」

 「フォースプレイ」はソフトのルールにはないと書きましたが、「フォースアウト」は下記のように定義されています。

【オフィシャルソフトボールルール】
1-28項 フォース アウト FORCE OUT とは、打者が打者走者となり、その打者走者、または後位の走者がアウトになる前に、前位の走者がその塁の占有権を失いアウトにされることをいう。

 ルール上では「塁の占有権」という難しい言葉も使われているので、場面を例に挙げて分かりやすく説明したいと思います。

【場面想定】
1アウト、走者一塁・二塁。
あなたが打席に入り、三遊間にゴロを打ちました。

 投球を打ち返したあなたは、1塁に向けて全力で走らなければなりません。同時に、一塁にいた走者は二塁に向かって走ります。二塁にいた走者は三塁に向かって走ります。

 これは、あなた(打者走者)が一塁に走ってくるために、一塁走者は一塁をあなた(打者走者)のために空けなければならなくなったためです。つまり、一塁走者はあなた(打者走者)に押し出されたのです。
 同様に、二塁走者はあなた(打者走者)に押し出された一塁走者が二塁に向かってくるために、二塁を押し出され三塁に向かわなければならなくなったのです。

 このように、走者が自分より後ろにいる走者や打者走者に押し出されて、前の塁に進まざるをえない状況を「フォース」と言い、「フォース」の状態にある走者を(が)アウトにする(なる)ことを「フォースアウト」といいます。

 「フォース」の状態では、守備者は打者走者・走者に先回りして、走者が走ってくる塁へボールを運び触塁すればアウトにすることができます。

【オフィシャルソフトボールルール】
8-6項 走者がアウトになる場合
2.ボールインプレイ中、走者が塁に触れていないときに野手に正しく触球されたとき。
3.フォースの状態で、走者が進塁しなければならなくなった塁に触れる前に、野手が球を確捕して触塁するか走者に触球したとき。

 この「フォースアウト」は、塁に触塁してアウトにしなければならないという事ではありませんので、塁間を移動中の走者に直接タッチしてもアウトにすることはできます。これも「フォースアウト」です。

フォースの状態は守備側には守りやすい

 「フォース」の状態は、守備側にとっては守りやすい状態と言えます。それは、アウトを狙える場所が複数(打者走者と走者)になり、複数あることで守備者は自分に近い塁でアウトを狙うことができるようになるからです。
 さらに、走者を待ってタッチをする時間が節約できるため、スムースに球を運べば複数のアウトをひとつのプレイで狙うことができます。これが「ダブルプレー」や「トリプルプレー」と呼ばれるものです。

 しかし、攻撃側にとっては注意しなければならない点が多く生じます。フライを上げたり、ライナーを打ってしまうと走者が進むことができないばかりかダブルプレーの危険が生じます(※これは「フォースアウト」ではないため別の機会に解説します)。また、たとえゴロであっても「フォースアウト」が成立しやすい位置に打ってしまうと、ホームベースに近い走者がアウトになったり、ダブルプレーやトリプルプレーが成立してしまう可能性が高まるからです。

 前に掲げた場面想定(1アウト、走者一塁・二塁)で言えば、サードやショートにゴロを打つと、三塁で「フォースアウト」が成立する可能性が高まります。一方、一~二塁間のゴロであれば、ダブルプレーが成立してしまう可能性もありますが、送球が遅れて一塁がセーフになれば、2アウト、走者一塁・三塁となって、アウト数は増えますが走者をひとつ進めることができたことになります。

フォースの状態は3つの場面しかない

 ややこしく感じられるかもしれませんが、フォースの状況は守備側にとっても攻撃側にとっても、プレイが始まる前に意識しておく必要があることです。

 フォースの状態は下記の3つの状況に限られます。

  • 走者一塁にいる時 
  • 走者一塁・二塁
  • 走者一塁・二塁・三塁(満塁)

※走者一塁・三塁の場面では、一塁走者はフォースの状態ですが、三塁走者はフォースの状態ではありません。

 この3つの状況が生まれた時には、どこで「フォースアウト」が狙えるか(の危険があるか)を意識して守備位置に付いて(打席に入って)ください。

フォースの状態が消えてしまうとき

 注意すべき点が一つあります。
 フォースの状態はプレイの途中で突然消えてしまうのです。

 ひとつは、走者が一つ塁を正しく進んだ後はフォースの状態ではなくなります。
 例えば、打者走者は一塁を、一塁走者は二塁を、二塁走者は三塁を、安全にひとつ塁を進んだ後の進塁はフォースの状態ではありません。アウトにするためにはタッチが必要です。

 もう一つは、後位の走者がアウトになる場合で、アウトになった走者より前位の走者のフォース状態はその時点で消えてしまいます。
 例えば、走者一塁・二塁の場面で、ゴロが一塁手の前に転がった場合などです。一塁手は走ってくる打者走者にタッチをしてアウトにすることが考えられます。打者走者がアウトになった時点で、一塁走者は打者走者に一塁を空ける必要がなくなってしまうためフォースの状態ではなくなります。一塁走者はアウトになる危険がある場合には無理に二塁に進む必要はなく一塁に留まることができます。二塁に向かって塁を離れた場合には、フォースの状態ではないため、アウトにするためにはタッチしなければなりません。

 少し難しかったかもしれませんが、まずは「フォースアウト」をしっかりと理解した上て、その他の場面は順次憶えていっていただければと思います。

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