集中力の「オン」と「オフ」
ビギナー選手がベンチの監督やコーチからよく声をかけられることに、「試合(ボール)に集中しろ!!」というのがあります。
それなりのプレイができるようになった選手は、試合を通してそれなりの集中力を保つことができますが、ビギナー選手は「どこに注目していいのやら」といった具合で、周りから見ていると集中に欠けているように見えてしまいます。
一つの試合の試合時間は1時間を超えるのが普通です。攻守交替があるとはいえ、1試合まるまる集中力を持つなんてのは、ビギナー選手にはなかなか難しいことなのです。
審判員としては、集中力を「オン」・「オフ」するタイミングを知ってもらうことで、むしろ余裕をもって試合に入って欲しいと思うのですが、その集中力のスイッチとなるのが、今回のテーマである「ボールデッド」と「ボールインプレイ」です。
「ボールインプレイ」と「ボールデッド」の意味
英語を習い始めた中学生ならわかると思いますが「ボールデッド」は「死んでしまったボール」という意味です。一方、「ボールインプレイ」は「競技中のボール」という意味です。直訳ですが、その意味は理解していただけると思います。
「ボールインプレイ」は「競技中のボール」ですから、ボールや走者、自分のチームの他のメンバーの動きに注意しながら、集中力をもってプレイを続けなければならない時です。
一方「ボールデッド」は「ボールが死んでしまった」わけで、プレイを続けることはできません。ここでいったん集中を緩め、得点の有無、走者の進塁、アウトカウントといった状況の変化を確認する時です。
では、「ボールインプレイ」、「ボールデッド」にはどのような時になるのかが気になります。「オフィシャルソフトボールルール」では細かく定められていますが、ここではその説明は行いません。なぜなら、これをひとつひとつ説明していくと、ビギナーへのルール紹介にならないからです。
※下にオフィシャルルールを示しますので、余裕のある方はご覧ください。
ここでは、「ボールデッド」と「ボールインプレイ」が切り替わる時、つまり集中力の「オン」「オフ」スイッチについてだけ、理解していただきたいと思います。
「オン」「オフ」のスイッチ
実は、「ボールデッド」と「ボールインプレイ」の切り替わりは、ルールを全く知らない人にも分かります。それは、この切り替わり点では必ず審判員のコールとジェスチャーがあるからです。つまり、審判員の動きにいくらか注意を払っていれば、「ボールデッド」と「ボールインプレイ」の境目は明らかなのです。
「オン」「オフ」のスイッチとなる審判員のコールは僅かです。「オフ」の合図は「ファール」と「ボールデッド」、そして「タイム」です。いずれも審判員は「両手を開いて高く挙げる」ジェスチャーをします。
一方、「オン」の合図は主審の「プレイ」のコールです。この時主審は、キャッチャーの後ろに立ち、ピッチャーを含め守備側の選手の準備状況を確認した上でコールしますから、ピッチャーや主審の動きを見ていれば、「オン」のスイッチを入れるタイミングは分かりますし、準備をしながら集中力を再度高めていくこともできるということなのです。
実は審判員も切り替えている
まとめるならば、「ボールデッド」と「ボールインプレイ」は、ルールを理解していなくても、審判員のコールとジェスチャーにさえ注意を払っていれば、容易に判断できるということです。むしろ、選手が自己判断し、審判員のコールとの間に時間差や判断ミスが生じた時ミスが生まれるのです。
この「オン」「オフ」の切り替えは、審判員も試合の中で行っています。もちろん気を抜くわけではなく、ベースの土を払ったり、アウトカウント・ボールカウント・得点差・ランナー等の状況と次に起こりうるプレイの予測など、様々な確認をこのタイミングで行うのです。また、スイッチ「オン」の合図となる「プレイ」のコールをかける前には、離れた位置にいる5人の審判員(グラウンド内4人とバックネット裏の1人)がアイコンタクトを取り合って息を合わせるのです。
さあ、「ボールデッド」と「ボールインプレイ」を理解することで、チームメンバーの心が一つになって、メリハリの利いた試合運びを目指していきましょう。
『オフィシャルソフトボールルール2021』
ルール9 ボールデッドとボールインプレイ
9-1項 ボールデッド
1.審判員が“タイム”を宣告したとき。
2~33 (略)
34.ボールインプレイになる場合を除くすべてのとき。
9-2項 ボールインプレイ
1.球審が“プレイ”を宣告したとき。
2~26. (略)
27. ボールデッドになる場合を除くすべてのとき。
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